全国的に産婦人科医が不足している原因をチェック

近年の医療業界において、医療資源の枯渇は重大な問題として受け止められています。どの診療科でも、後進となる若手医師の確保・育成に力を入れているのですが、医師の絶対数が足りていない現状もあり、十分な人員の確保には至らないのが状況です。その中でも産婦人科は、特に未曾有の医師不足にさらされています。
当ウェブサイトでは小児科が不足している原因についても触れていますので、そちらもぜひご覧ください。

産婦人科医の勤務の現状

2014年に日本産婦人科医会より発表された、「産婦人科医師の勤務実態と 将来ビジョン」には、現在の産婦人科医の勤務状況が克明に示されています。この資料に掲載されているデータによると、順調とは言えないまでも産婦人科医の数は年を追うごとに増加しているようです。その人数比率を自治体毎に検討した場合、東日本では人口当たりの産婦人科医が少なく、西日本では年齢の高い産婦人科医が多いという結果が見えてきます。

また集計当時の全国の産婦人科医の平均年齢は46歳となっており、今後10年で加齢を原因とする勤務医の定年退職や開業医の引退による、産婦人科医の減少は免れないものと言えるでしょう。資料においても、半数の自治体で産婦人科医の人数が激減する可能性が示唆されています。命の誕生に携わる産婦人科医の減少は、自治体にとって歓迎できたものではありません。必要十分な産婦人科医の確保は、日本にとって急務と言えるでしょう。

産婦人科医は控訴率の高さが不足の原因

しかし研修医制度導入後に12.1%もの医師数が増加しているのにもかかわらず、産婦人科医は4.5%しか増加していません。この現状の背景には、産婦人科特有の問題が見え隠れしていると言えるでしょう。その問題とは、訴訟率の高さに他なりません。

「身長科目別の訴訟割合を示した資料」によると、平成28年に発生した医療訴訟の中で、産婦人科は52件となっています。単純な訴訟件数で言えば、内科医の170件には遠く及びませんが、医師1000人当たりに換算した場合の訴訟件数は約4件になり、トップ3に入るのです。この件数は、最も訴訟リスクが高い、形成外科に次いで2位となります。医師も1人の人間である以上、訴訟沙汰には巻き込まれたくないのが人情です。大変不本意ではありますが、この訴訟リスクの高さは、産婦人科医の補充が遅々として進まない大きな原因の1つと言わざるを得ません。

産婦人科医が訴えられやすい理由

しかし日本の産婦人科による処置の安全性は、世界でもトップクラスと言えるレベルです。本来であればこれほど訴訟沙汰に巻き込まれる筈はありません。しかし新しい命の誕生に立ち会い、その手助けをするという産婦人科特有の業務内容を鑑みれば、この訴訟リスクの高さも致し方のない事と言えます。

なぜなら、専門知識を持った医師とお産に挑む一般患者とでは、出産に対するリスクの認識に大きな差があるからです。また新しい命の誕生に対する期待はかなり大きく、出産する妊産婦とその家族の心情は、「無事に産まれて来て当然」という気持ちを持っています。出産時にトラブルがあり、致し方のない結果であったとしても、彼らにとっては「医療ミスがあったのではないか?」という疑念を残すことになるのです。